電子書籍の読み手の未来

iBooksがバージョンアップされ、iBooks Authorが発表されたこともあって
電子書籍が本格的になるのかなーということが頭をよぎった。

たまたま今週は本を3冊ほど読んでいた。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか

敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか

それと同時期に年間購読していた溜まっていた電子雑誌も流し読んだ。
MAGAZINE | WIRED
National Geographic Magazine Subscriptions | Official Site
さらに、日曜日の朝にやっている将棋番組を見た。
NHK囲碁と将棋 -NHK杯テレビ将棋トーナメント 棋譜再生-
そのあとで、iBooksのバージョンアップをして、サンプルの電子書籍を眺た。

といった一連の体験をしたときに、自分の感覚として「紙の本と電子書籍は別物だ」ということを感じた。


電子書籍には、文字以外の映像・音を盛り込んでいたり、イラストを触ると動いたり音が出たりするといったインタラクティブ性のあるものが多い。これを「読んでいる」感覚は、どちらかというとテレビをみている時の感覚に近い。iPadで読んでいるものが英語なので字をじっくり読んでいないということもあるが、1つのページ内に映像があると注意はどうしても映像の方にいってしまう。字を読もうと集中していても、映像やインタラクティブな操作に気を取られてしまうのだ。なのでじっくりと文章を読んで、頭の中に映像を思い浮かべるということはしづらい。というか、映像や写真がふんだんに盛り込まれているので、自分で頑張って思い浮かべることをしなくなっている。

一方旧来の書籍は、基本的に字ばっかりだ。この場合、字を読んでいって頭の中で映像をつくって流している。無意識のうちにそういうことをしているのだということを、将棋の解説を聞いているときに気づいた。解説で「二5歩」「同金」とか言っているのを聞きながら、それを頭の中で再現するのは結構大変だ、と感じたときに思いついた。本を読む時の感覚は自分にとって当たり前のもの過ぎてあまり意識していなかったが、本を読むのも慣れてないと結構しんどいのかもしれない。
(というのも「ミレニアム」はかなりページいっぱいにが活字で埋め尽くされており、最近テレビばっか見ていたせいか、慣れるまで本を読む結構しんどかったかのだった。。。)
テレビやゲームをみていると、想像しなくても映像を与えてもらっちゃってるからなあ。


この一連の考えが自分の中で繋がったときに、最近、活字離れが進んでいるという話題を思い出した。
少し前に、知人の方から新聞がこの10年ほどの間で活字のフォントサイズを大きくして、情報量が30%近く減っているという話を聞いたのだ。また書籍についても、1ページ内の文字数を少なくしたほうが読者層が広がるので、本の中の文字数は減少傾向にあるという話も聞いていた。最近はマンガのコマ間の間を保管できずにストーリーを理解できない人が増えているという噂話どっかのサイトでみた。


活字だけを読んで情景を頭の中で思い浮かべるということは、それだけでスキルになりつつあるのかもしれない。


電子書籍が日本で普及するかどうかは分からないけれど、著作権の問題云々があるから既存の本がそのまま移植されるということにはならなそうだ。そうすると、逆に大手が参入してこないことをチャンスとして「新しい読書体験」を提供する人たちが参入してくるだろう。というか、そうなってほしいと思っている。
ただそうするとターゲットが若い人になるだろうから、また普通の本とは違った種類のコンテンツを提供しようとするだろうから、きっと映像やギミックが多用された雑誌のようなものになっていく気がする。まあ、これもそうなってほしいと思っている。WIREDみたいなのが日本に早くできてほしい。
でもそうやってできる電子書籍は、これまでの「本」とは違うものなんだな・・・、と思ったのだった。


進化とは環境によって自然淘汰が行われ、何世代か経過した後に結果的に形質的な特徴が変わっているということだ。進化自体は、良くなることでも悪くなることでもなくって、その環境ではたまたまその遺伝的特徴が生き残ったというだけ。
電子書籍は進化した書籍として、紙にとって代わっていってしまうのか。
消費者は易きに流れるという意味では、あと20年くらい経ったらその方向性が濃厚な気がしてしまった。


電子書籍はどんどん普及すればいいとおもっているが、「読書体験」自体が大きく変えられようとしていることに気づいたので、紙の本もちゃんと残っていってもらわないとなあと思った。まあガジェット側ももっと頑張ってもらう余地があるかもですが!