イギリス暴動に思うこと

炎上し暴徒が叫ぶ、故郷イギリスの今 - Time Out Tokyo (タイムアウト東京)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110809-OYT1T01091.htm

イギリスの暴動のニュースは耳を疑うようなことだった。
ドル破綻のカウントダウンかのような株式市場の暴落が続いていた中で突如として起こったイギリス内の暴動。ドルがどうなるのかとここ数日間は不安を感じさせるようなニュースが流れていたところだったので、この暴動は最初そうした金融不況の影響によるストライキなどかと思った。


だが職のない若者たちや移民たちといった人々の鬱積した不満が爆発したというような類のものであるようなので、直接的な関係はないように思えてきた。


幾つかニュースを見ていく中で衝撃的な印象を受けたのが、このツイート。

エジプトのジャスミン革命のようではないか。。

SNSの功罪、ツイッターFacebookの危険性というようなお決まりの批判がこれからたくさん言われるんだろうなあと思いつつも、仲間内の連絡には携帯電話を使うのと同じような感覚で FacebookTwitter を使っているというのは当たり前のように思う。


とはいえ SNS の伝播のしやすさが、最初は数人の中で爆発した怒りをそれまでくすぶっていた周囲の人々へと届けるツールとなったという一面はやはり捨て切れない。
ミーム意伝子)について論じた本で面白い思考実験があった。


人口数百人程度で、都市化も進まずに住民がみなのんびりと暮らしている島があった。大した産業もないが、島の人々は農業と漁業で自給自足の生活を送り、みな大らかで幸せに暮らしていた。
ある日、島にテレビやラジオ(今ならインターネット)が開通し、島の住人は毎日テレビを見るようになった。(アメリカの放送が流れてきたとしよう。)
ニュースからは全米で今日一日で何十件、何百件の殺人事件が起きたという報道がさかんにされ、強盗なんて日常的に起きていることが日々伝えられる。


それまで島の住人たちが属していたコミュニティーでは殺人事件は10年に1度くらいしか起こらなかったが、テレビ(インターネット)が彼らの所属するコミュニティーを変えてしまった。今や彼らが所属するコミュニティーでは年間に何前人もの人が殺されるのが当たり前の世界になってしまった。


その結果、人々は自衛のために銃をもつようになり、強盗、殺人事件も増えてしまった。。



これは思考実験ではあるが、多分に事実を捉えている所があると思う。


自分がバーチャルに所属するコミュニティーを変えてしまうという意味で、メディアは強い力を持っている。従来のテレビ、新聞といったマスメディアは、プロパガンダという大きな強制力はあったが、なんらかの検閲機関を通って情報が配布されていたので、こうした暴動などについては抑止の方向にはたらいた。

一方、個人メディアの集合体であるインターネット、SNS は個々人の感情がストレートに伝えられ、時としてそれがマスメディア以上の力を持ってしまうがために、何かのはずみで多数の人の思惑を一気に一つの方向へ傾けてしまうことがある。

集団の心理が、これまでよりも非常に敏感にどちらかへ傾くようになってしまったということだ。
もうちょっと例えて言えば、これまでは非常にゆっくりと、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていた牛が、闘牛のように荒れ狂い、ちょっとした刺激でそちらの方へ猛突進するようになってしまったように感じる。大衆が感情のまま振る舞うことで、国を脅かす時代に入ったとも言える。


僕自身、インターネット、SNS がないと生活に支障が出るくらいヘビーユーザーだ。なのでネット・SNSを否定する気は全くない。今更ネットがない社会を考えることも無意味だ。グレートウォールをつくるという考えにも、個人的には賛同しない。自由な空間であるからこそのネットだからだ。
だから僕達一般大衆の一員は、もっと賢い大衆にならなければいけないと思う。



国家の「民度」が問われる時代が始まったのかもしれない。
「一億総中流」であり、炎上、2chといったネットがもたらすネガティブな反応を体得し、東北大震災では世界を感心させた民度を見せつけた日本は、人心の安定という意味で世界を牽引できるだろう。
あまり誇れることではないように思っていたものが、意外と強みだったりするのだ。