TEDxSeeds 2011 会場の雰囲気

 今年も TEDxSeedsのスタッフとして本会議運営のお手伝いをさせてもらった。

TEDxSeeds

僕の担当は飲食の準備ととおもてなしであったので、カンファレンスが行われているホール外での仕事が多く、今年も当日登壇者のスピーチを直接聞いてはいない。


 会場の中に入る機会があったのは、セッションの間にクラスフォトというスタッフ含め300人近い参加者全員の集合写真を撮るイベントの時。直前のセッションが終わる数分前に会場の中に入った。その時は、ちょうど佐藤康雄さんの話が終わろうとしている時だった。


 会場内の最後尾の壁際に立っていてるだけで、その場にいる皆が息を詰めるようにして佐藤さんの話を聞いていることが伝わってきた。張り詰めた空気がそこにあった。会場全体が集団催眠にかかっているような錯覚を覚えた。そこだけが別世界であるかのように、会場内は強い集中と不思議な一体感で支配されていた。

 スポットライトは舞台に当たっていて、話を聞いている参加者席側は暗くなっている。だが、いちばん後ろに立っている自分が照らされているかのような眩しさをおぼえた。
 それで少し、我に返った。
 佐藤さんの話を聞きながら、会場内の張り詰めた空気のことを思った。300人の中で一人しか声を発していないのに、そこにいる多くの人々が発する熱気を感じる。皆が食い入るように話を聞いている。その強い眼差しのすべてが、共感の心をもって注がれていることが、この一体感をつくりだしているのだろうと思った。


 それは佐藤さんを始めとした登壇者個人のもつ力でもあるし、今日のためにしつらえられたこの赤レンガ倉庫の舞台の力でもあるだろう。また限られた意識の高い参加者全員の好奇心と、開放的で前向きな精神性にもよるのだと思う。これがTEDというものが目指しているもの、アメリカで開催されているTED本体に参加してきた人が言っていた、表現しがたい一体感に近いものなのかもしれない。この場に来て、思いを伝えること。この場に来て、新しいアイディアを受けること。それらの意味が、少しだけ分かったような気がした。


 時間にして数分ではあったが、佐藤さんのお話を聞いていて目に涙が滲んでいる自分に気づき、驚いた。だが佐藤さんのお話を聞いた人たちの多くが、涙が止まらなかったという感想を言っていたので、これは自然な反応だったのだろう。

 お話の内容はどの方のものも、興味深くて、すばらしい。それは直接動画を見ていただきたい。
TEDxSeeds - 佐藤 康雄
(特に佐藤さんのお話は、僕には解説するようなことはできず、
 ただ見ていただきたいと思います。
 こういった方々に、日本が支えられているということを再認識し、
 命の大切さと命を救おうとしている方々の真剣さを知ることができたと思います。)

 TEDxSeedsの本会議への参加は限られた人数の方しかすることができないので、動画だけではなかなか伝わりにくい、会場の空気を少しでも伝えられることができればと思い、ほんの数分の間であったけれど、鮮烈に感じた印象を書いておいた。

※この写真はセッション後のクラスフォト撮影中です。