当事者意識

巣立っていってしまった先輩にはイロイロなことを教えてもらったが(主に背中を見て、だが)、
直接 教えてもらったことで、よく思い出すことがある。


「当事者意識をもたせることが大事」


ということ。


プロジェクトを率いる時に、開発者や検証者一人一人までが
「自分のプロジェクトだ」という当事者意識を持たせることが、とても大事ということ。




先日、歌舞伎を観にいって同じようなことを感じた。


白塗りをしている役者さんたちは、本当に素晴らしい演技をしていて、
僕も初めて(いい席で)観た歌舞伎に興奮して、どっぷりはまっていた。


話のクライマックスで、
舞台の上で数十人の火消しと相撲取りとが大喧嘩をするという見せ場に入った。


このときは全員が全員白塗りをしているわけではなくって、
すっぴんの十代の少年たちが多く出ていた。
彼らが、演技をしているというか、仲間内でじゃれあっているというような感じだったのだ。


芝居自体はとても楽しかったし、その少年たちのじゃれ合いも、
ピンと張った緊張を和らげる意味もあって、一つのアクセントではあったのだが、
役者さんたちとの子トラストが立ちすぎていて、
正直、その時は少し醒めてしまった。



白塗り役者さんと、少年たちとの違いはなんなのだろうか、と考えていた。


年齢、キャリアの差だけではなくって、
おそらく、それが「当事者意識」なのだと思う。


白塗り役者は、本当の意味でその舞台の「顔」となっているわけで、
彼の表情や一挙手一投足に観客は注目しており、気は抜けないだろう。
それを十分に意識して、十二分な演技をしていた。


一方、数十人の火消しの一人の役の少年は、
全体の中の一人で、彼個人の表情を見られているという意識はあまりないだろう。
そのため、自分のやりたいがままに舞台を跳びまわっていたのだと思う。
(それは十代のやんちゃ心であるかもしれないし、そういう悪戯は好きだ。)



これを一つのプロジェクトに置き換えると、
十分にありえる話で、新人プログラマ、テスターは、
自分のつくっているものの重みというものをあまり知らないが故に
無邪気に自分のしたいようにやる(少し前の自分だ。。。)


でも、これをガチガチのルールで押さえつけてやらせるというのもよくない。
歌舞伎で言えば、もしそれをやっていたらあの躍動感や楽しさは出せなかっただろうし、
プロジェクトで言えば、最高につまらないものになる。


だから「当事者意識」なのだ。
舞台に立った以上、全員が自分が主役と思う、
自分の役を、自分なりの最高の演技でやりきるように持って行くのが、
プロジェクトマネージャーの腕の見せ所だと思う。


学ぶことはまだまだまだまだたくさんあるなぁ。