スラムドッグ$ミリオネア

半年くらい前に予告編を観た時からこれは面白そうだと思ってたのだけど、
まさかアカデミーとは・・・。
映画の日(1000円になる)に観てきました。
http://slumdog.gyao.jp/

いい意味で予想を裏切られて、手応えとしては期待通り、みたいな感想。
PG-12って書いてあったから、あれ?と思ってたけど結構こわい(残酷な)シーンも出てくる。
おとぎ話的な要素とともに、残酷な現実というものがこれでもかと明に暗に示される。「スラム街出身の青年がミリオネアの問題に次々と正解。教育も受けていない彼がなぜ次々と答えを当てられるのか?」というあらすじなのだけど、スラム街出身の人には(みんながみんなそうではないと思うけど)こんな人生が待ち構えているのね、というあたりが、とても重い。


僕は5年くらい前にインドで3週間くらいバックパッカーをやってきたことがある。へっぴりバックパッカーだったので、そんな大したことはしてないし、この映画の舞台であるムンバイにも行かなかったけど、1週間くらい滞在していたバラナシでの体験は、それなりに強烈に覚えている。(ガンジス川のあるところ。ベナレスという方がなじみがあるのかな。)
今調べてみるとそれなりに危ない町みたいだけど、滞在している時からそういう感覚はかなりあった。
牛の糞の匂いだったり、ゴミの匂い、迷路のような街の中を歩いていると常にそういう匂いにつきまとわれる。「ハシシ?(麻薬)」といってくる怪しいお兄ちゃんに一日3回(もっと?)は声をかけられるし、広い道路にでれば物乞いの人達がいっぱいいるし。
ここが死者の町だからなのか、この町で僕は一気に無気力になってしまった。
(日の入り後は怖くて出歩かなかったので)毎日夜明けとともにガンガー(ガンジス川)にいって、ガンガーのほとりでただひたすらぼんやりと川面を眺める。本当にそれしかしていないような生活を一週間くらいしていた。


そんなある日、小さな女の子が声をかけてきた。
(その子が、映画のヒロイン、ラティカの少女時代にすごく似ていたので、この映画を見ているときにそれをずっと思い出してしまっていた。)5歳くらいの女の子で、ラティカと同じようなワンピースを着ていた。2人くらいさらに小さな弟らしき少年を連れていた。そう、彼女はお花を売っていたんだった。あまり覚えていないけど、最初は「ねぇお兄さん、お花を買ってちょうだいよ。」と言っていて、その頃の僕は結構免疫ができていたので、「NO〜。」と言った。お花といっても、その辺で摘んできたようなやつだし、こういうのって一回あげちゃうと連鎖的にそのあとたたみかけてくるものだから、ここは我慢の子だと。
しばらく「買いなさいよー」「No」というやりとりが続くと、だんだん彼女は怒り始めた。僕の横でピョコピョコ飛び跳ねながら、「お前はなんでお金を払わないんだ!!いいから花を買って、お金を私に渡しなさい!」みたいなことを、ずーっと言っていた。その怒り方もすごくかわいらしかったのだけど、ぼくはただ「No~」と言い続けていた。何分間か、結構長いことそういうやりとりをやって、ひとしきりの罵倒を浴びせて彼女はようやく去っていった。
行ってしまった後で、あぁ、お花くらい買ってあげればよかったなぁ、とすこし後悔したのを覚えている。あの歳から兄弟達を養って生きていく女の子の、これからの人生を少し憂えた記憶がある。


ガンガーのたくましい子供達の記憶もある。別の日の話だけど、例によって僕に群がって「なんかくれよー」と言ってきた子供達にがいた。そこで僕はふと思い立って、持ってきたもののさっぱり使わなくなっていた色鉛筆と画帳を彼らにあげた。100円ショップで買うようなやつを。
彼らは、なんかくれたよ!といってしばし群がって騒いでいたが、お返しに、一巻きの赤い凧糸をくれた。これは嬉しかった。
もっともそのちょっと後に、その色鉛筆を持ってきて僕のところに駆け寄ってきて、「お前、これ買わないか?」と言ってきた。その時は「おまえらw」と苦笑するしかなかったけど、今思えばこいつらの方がよかったな。


インドで僕が感じたのは、自分一人の力ではもうどうしようもない感。
わりと貧しい地域ばっかりみてしまったので、そう感じたんだと思うけど、どうやったらこっから人生ひっくりかえしていくんだろうか、と考えてしまったのをよく覚えている。ガンジーとかって、本当にすごいなと。
だから躍進著しいインドというのは、すごくよくわかる。元からインド内のエリートなんだと思うけど、日本人とは多分モチベーションもなにもぜんぜん違うんだろうなと。こういうのを知っているだけでも、それはすごい力になるんだと思う。自分もそういう人達と渡り合っていかないと行けない時代がもう来ているんだと思うと、無力さに焦るけど、やれることをやっていこうと思う。



映画のことを少し調べてして知ったのは、こうやって頑張っている人達もいるんだなということ。
そういうのを知るだけでも、それは力になると思っている。

『スラムドッグ$ミリオネア』の原作者が本当に伝えたかったこと - COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン) - X BRAND

重要なのは「あなたがどこから来たか」ではありません。目を向けるべきは「あなたがどこに向かおうとしているのか」なのではないでしょうか。


http://www.plan-japan.org/home/topics/090413indi_film/index.html

アカデミー賞8部門受賞作「スラムドッグ$ミリオネア」で司会者役をつとめる俳優のアニル・カプール氏は、同作品への出演料全額をプランに寄付しています。 また、1月には同作品のダニー・ボイル監督やその他スタッフ・出演者とともにチャリティ・オークションを開催し、収益をプランに再度寄付しています。また、映画制作会社もプランに寄付して、インドの子どもたちに貢献しています。

※ 思いがけずシリアスな感想になってしまいましたが、個人的にはエンドロールが最高によかった。インド映画にかかせないアレが観られてうれしい。映画の感想としても、このエンドロールに救われた感じがあるなぁ。。サリームも一緒に踊ってくれてたらよかったのに。音楽もかっこよかったしね。