サロゲート(1)身代わりロボットと命の価値
ありそうな未来。
ロボット工学の発展により、人間の脳活動を直接読み取り、自分のコピーロボット(サロゲート)を遠隔で操作できるようになった。サロゲートは一気に世界中に普及し、ほとんどの人々がサロゲートに乗り移り、家から外へは出なくなった世界での話。
話としては、(絵柄的にも)攻殻機動隊を実写化したような感じ。核となるストーリーに関しても、割と普通の感じで、それこそ攻殻のようにシリーズ化してもいいような内容。時間も1時間半なく、割と説明が省略されている描写があって、そこも攻殻の漫画を読んでいるような感覚だった。
とはいえ、世界観はよく考えられてつくりこまれていた。細かいところではいくつか突っ込みたいところはあったけど。
話の本筋とは関係ないところで面白かったのは、
サロゲートが普及することによって世界から犯罪が激減している。
というところだ。「人が殺されるなんて何年ぶりだ?大事件になるぞ」というセリフがあるのだけど、アメリカ人が発するセリフとは思えない(笑)。
日常生活の全てはサロゲートに乗り移って行うので、生身の人間(オペレーター)は家から外に出ることがない。なので交通事故に遭う危険もないし、万が一強盗にあって殺されるようなことがあっても、死ぬのはサロゲートなので本体は無事。身体だけ新しいのに乗り換えればいいのだ。
そんな世界では殺人がなくなるのだろうか?
- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
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でもこれはどうなんだろう。一番正直な感想(つっこみどころ)としては、サロゲートを遠隔操作しているオペレーターは家で昏睡状態みたいになっているので、そんな無防備なところを襲われたらひとたまりもないのでは。。強盗とか逆にし放題なのでは。。。セキュリティが固い様子もなかったし。
逆に強盗、誘拐はふえるのではないかなー、と思ってしまう。
そして劇中でも描かれていたけど、サロゲートは超丈夫なので主人公が怒りに任せてボコボコにしたりしても大丈夫。ちょっと顔がはがれちゃった、もう、くらいなノリ。でも、そのノリでリアルな人間をボコボコにしちゃってほんとに殺しちゃう、みたいな事件は起きそうに思う。。
いい方向に考えられるところとしては、「戦争」のあり方が変わるのではということがある。僕は軍事とか疎いですが、戦場でバンバン打ち合ったり爆弾落としたりするのって、人の命を奪うためにやっているはず。ところがサロゲートが出来た世界では、兵隊は全て身代わりロボットになるわけで、これらをいくら壊しても「人命」自体はなくならない。
今のところ、戦場で「人命」は稀少なものだけど、身代わりロボット同士が戦うようになると、戦場でバンバン打ち合うことはお互いの機械を壊し合うことだけになるので、目的が少しずれてくるのではないだろうか。
そのずれた先が武力行使よりも平和的な方向(外交とか)に向かっていけば、ロボットを兵器として利用している産業にも価値があるかなぁと思う。より恐ろしい解決手段が見いだされてしまうと、よくないけど。。
とはいえ、ロボットとか BMI とかは DARPA(国防高等研究計画局)の助成金でやられているのも事実。遅かれ早かれ身代わりロボットが戦場の主力になる日はやってくるだろう。。
その頃には、どんな世界がやってきているのか。インターネットが当初の想定とは違って使われている今の状態のように、ロボットも人類を新しい世界に連れて行ってくれるように利用される日が来るようにしたい。
※ ちなみに「サロゲート」観ようと思う方は、石黒浩先生の本を読んで現在の状況を予習してから行った方がおもしろくなると思います。石黒先生がつくった本物のサロゲート(ジェミノイド)も、映画に一瞬出演しているし。
- 作者: 石黒浩
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