エンロン

映画「エンロン」を観てきた。
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ここ最近、「ハーバードMBA留学記」を読んでいて
その中でエンロンについても何回か触れられていて、気になっていた。

ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて

ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて

今日は、たまたま空いた時間にケータイで映画館情報を見たら
ちょうどいい時間だったので、代々木から急いで渋谷に行って滑り込みセーフ。


映画「エンロン」は、HPの表紙の3人が役者さんのようだったので
すっかり再現ドラマだと思っていたが、完全なドキュメンタリー。
当事者へのインタビューや、裁判の様子、エンロン社トレーダーの業務中の通話が録音されていたものなど、
非常に生々しいものだった。
ドキュメンタリー好きなので、かなり面白かった。



エンロン自体は、とても優秀な人の集まりだった。
その中でも、CEOのジェフリー・スキリング氏の優秀さはずば抜けていたように思う。
(HBSの入学試験時に、「あなたは頭がいいか?」という問いに
「うんざりするほどね(I'm fuckin' clever と言っていた)」と答えた逸話がうなずける。)


エネルギーや帯域幅、天候をデリバティブ商品として扱うなど、
非常に革新的で、世界の経済を変革するという志も本当にあったのだろうなと思う。
多分、途中までは、高い志と夢と野望とをもって、
世界を変えるんだ、という思い出突っ走っていたのだろう(世界を牛耳るんだ、かもしれない)。
それが実体として利益がないというビジネスモデルで、いつしか破綻に追い込まれていく。


スキリング氏をはじめとした経営陣の責任問題になっているが、
最後の方で出てきた

結局 エンロンはトレーダーたちに牛耳られていたのだ。

というセリフがこの暴走を物語っていると思う。
もちろん、エンロンに投資をした超大手金融機関もそうだが、
エンロン内部の、儲けることのみを追求して、
他の抑制が効かなくなってしまった優秀な天才たち、トレーダーの暴走を止められなかったのではないか。
いや、経営陣もおなじグループにいたのかもしれない(最後の最後に株を売り抜ける直前までは)。


エンロンは金融(先物取引)という感じだったのでこの破綻が訪れたが、
これは技術系ベンチャーにとっても、同じなのではないかと思った。
特に今のネット系ベンチャーは、世界を変えるという志のもとに、
革新的な技術で、既成概念をひっくり返すサービスが登場している。
ただし、広告以外の収益モデルは未だ見えていない(と思う)。


この状態で上場してしまうと、投資家から期待値は高く、
結局 エンロンと同じような道を走ってしまう危険性が高いように思った。
これはライブドアではなく、もっといわゆる技術ベンチャーみたいなところに当てはまる話だと思う。
Google はたまたま広告を取れたから良かったが、
そうでなければ、「優秀な子供っぽい天才」たちは暴走するのではないか。
そんなことを思ってしまった。



映画自体はほとんど満足するないようだったが、一点 気になったのはルー・パイ氏の扱い。
彼は、少なくともこの映画を見た限りでは不正には関わっていたようには見えなかった。
エンロンの勃興期のメンバーで、方向性が変わる前に辞めていたように描かれていたからだ。
それなのに、彼だけは性癖のことをスキャンダラスに、エグく描写されている。
彼だけが経営幹部の中で、400億円ほど売り抜けて、法的な追及を受けていない成功者である
ということに対する攻撃であるのならいいのだが、
彼だけがアジア人であるということに対する攻撃というように見え、
この点でだけは、映画の作り手に対して、不信感を持つものとなった。


あとは非常に面白かった。
たぶん企業活動をしている人であれば、それも時代の最先端を走るようなコトをしている人であれば、
我がことのようにしてみる価値があると思う。
個人的にはアングロサクソンエリートの群像を生々しく観られたということにも価値があった。