不都合な真実

映画「不都合な真実」を観てきた。


まずアル・ゴアという人のすごさを感じた。
人は皆それぞれの役割を持っていると言うが、
この人の場合、環境問題の伝道師という役割がぴったりだ。
高いプレゼンテーション能力が遺憾なく発揮されている。


CO2濃度の推移を示したグラフ一つをみせるのにも、デザインに気を配っている。
アメリカのアニメで使われるような太い線と黒背景に赤という色使い。
学術発表ではなく、メッセージを伝えることが目的なので、これが正しいのだ。


パワーポイント(?)のスライドを、言葉に合わせて絶妙のタイミングですすめていく、
エンターテイメント的なプレゼンテーションは、スティーブジョブズのプレゼンを見ているような気分だ。



アル・ゴアという人は、学生時代に環境問題の研究をして感じた危機感に対し、
自分なりの、自分にしかできないやり方でその解決に当たっている。
おそらくこの人の真似は、ちょっとやそっとの人材ではできない。
エネルギー産業、自動車産業といったアメリカの旧勢力の代表格といった企業群を敵に回してしまうことになるからだ。


彼が大統領を目指したというのも、なすことをするための最善の策と考えてのことだったのだろう。
環境を守るためにしなくてはならないことの多くは、法律の改正であったり国家プロジェクトであったりする。
そのためには大統領になるのが一番の近道だ、というような。
この辺が、机上の空論を振りかざすのではなく、実行する役割を担おうという気概なのだろう。


別に学者も机上の空論というわけではない。人にはそれぞれ役割があるのだ。
研究者は、地球からの警告に気づくことに全力を注ぐべきで、
政治家はその警告に答えるために制度を整えればいい。
企業は省エネ製品をつくることに注力すればよく、
消費者は省エネ製品を選択すればよい。


そんな非常に現実的で、だれでも実行することができる答えも提示してくれている。



人はみなそれぞれの立場で、それぞれのやり方で環境に対して貢献することができる。


以前、札幌に住んでいた頃に北大の東三郎先生という方の、森をつくるという活動についての講演を聴いた。
「かみねっこん」という、誰にでもできる、でも実は効果的な植林グッズの発明と、
週末とかに川原に苗木を「置く」というだけの植林活動。
この話を聞いたのはもう5年くらい前だが、ずーっと頭に残っている。


ぼくは能動的に地球環境を改善させるには、森をつくることが必要だと思っている。
自分には何ができるか。
人生を考えていく上での一つの指針だ。