Murder Ball

映画、マーダーボールがDVDレンタルされていたので、観た。


マーダーボール公式サイト
screenshot

本当は映画館で観たかったのだが、
タイミングが合わないうちに上映が終わってしまったのだ。



その激しさから「Murder Ball」と呼ばれる車椅子ラグビー競技。
選手たちは皆、身体に障害をもっているが、
話を観ているうえで、それは全く問題にならない。
人それぞれ、いろいろな経緯で身体の自由を失ってはいるが、
それらは単なる過去の事実として、淡々と語られる。


それ以上に、このスポーツをめぐる人間ドラマが非常に熱いのだ。
なによりこの映画がドキュメンタリー、実話であるということが面白い。


マンガよりも強烈な個性を持った人たちが、
激しい感情をむき出しにして、ものすごく鮮烈に生きている。
人生を輝かせる条件に、障害はハンデにならないということを全身で表現している。


中でも一番 強烈な個性はジョー・ソアーズ氏だ。

子供の頃、小児マヒで四肢マヒ患者に。
11歳の頃、ポルトガルからアメリカへ家族で移住する。
1989年、車椅子ラグビーを開始。
全米選手権に13回連続で出場し、記録を保持する。
チーム"Tampa Generals"に所属している間、93連勝、41回連続決勝進出という偉業を成し遂げた。
ラグビー以外にもテニス、バスケットボールなどの競技に親しむ。
1996年ウィルチェアー全米オープンではA部門決勝に進出、ダブルスでは優勝した。
また24年間に及ぶ競技バスケ人生では、オール・トーナメントチームにも数回選出されている。

という、車椅子スポーツ界のスーパーマンだ。


彼は年齢を理由にラグビーの全米代表から戦力外通知されたのを恨み、
米国の宿敵カナダのヘッドコーチに就任。
その辣腕ぶりでカナダチームを一気に強豪に育て上げる。。。


11年連続で世界大会優勝をしているアメリカチームに、
ジョー・ソアーズの執念がのりうつったカナダチームが襲いかかる。。。


なんてドラマチックなのだろう。
なにより、出演者(演じているのではない。これは記録映画だ。)が皆、一様に熱い。
試合開始前に円陣を組んで気合を入れるところなど、
これまでみた他のどんなスポーツよりも、激しい。


人間、やっぱり内からあふれ出すエネルギーが魅力なのだろうか。


選手たちはナンパもするし、いたずらもするし、
試合になれば鬼の形相で走り車椅子同士を激突させ、相手を突き飛ばす。
一瞬一瞬が、激しく、美しい。



主人公的な位置のマーク・ズパンは、
友人の飲酒運転による事故のため、歩けなくなった。


怪我をさせてしまったことで心に重い十字架を背負い、一時期 自暴自棄になっていた友人と、
すさんでいた中で車椅子ラグビーに出会い、人生の輝きをつかみとるズパンの対比も描かれている。



僕は、人生は周りの環境によって大きく左右されると思っている。
内部環境、外部環境共にだ。
マーク・ズパンの場合、事故の直後から内外環境共に激変した。


それは、世間一般の常識からすれば、最悪の環境変化であったが
マーダーボールという外部環境が彼を内側から変えていったのだろう。
栄光は自分で掴み取るものなのだ。



そしてもう一つ、非常にきびしく子供を育てるジョー・ソアーズにも
内部環境に対して激変が起こる。
奇しくもこの映画の記録中に心臓麻痺で生死の境をさまようことになったのだ。


生還後、ソアーズは生まれ変わったようになる。
死の直前まで行ったことで、今の生の大事さを知ったのだろうと思う。
それまできびしかった息子に対して、愛情をストレートに表現するようになる。


ソアーズも、彼の奥さんも、息子さんも、
とてもいい笑顔を見せるようになったのが、とても印象的だった。


栄光ははるか遠くの山の頂上にではなく、自分の身の回りに毎日存在している。
それを毎日慈しんで、育てていくことが大事だ、
というようなメッセージを感じた。


本当に元気をもらえる映画だった。