ピープルウエア

ピープルウエア 第2版 ? ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

ピープルウエア 第2版 ? ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

不朽の名作と誉れ高いので、読んでみたが、やはり素晴らしい本だった。


初版は20年前に書かれたものであるが、
今、自分の環境をみわたしてうなずかされること、ニヤリとしてしまうことがとても多い。
それだけ人類が進歩していないということか。
アメリカの企業は、ここに書かれているような問題が数歩先を行っているのだろうか。


本書が対象としているのは、
システム開発のプロジェクトマネジメント的な領域だが、
頭脳労働全般にあてはまることであろう。



僕自身、システム開発もしつつ、プロジェクトマネジメントもしつつ、
というようなあまり良くない状況にあるが、
同じような境遇の人は、日本のシステム業界に多いと思う。


それに、いわゆる製造業の「設計」という仕事は
システム開発に結構近いようなものであると最近なんとなく認識しているので、
本書の事例は、そういった分野にも適用されうることだ。



頭脳労働。
知識産業の根幹となるこの「仕事」は、とらえどころがない。
それは、人が「考える」という行為が複雑で(個人差がある)、
「考える」ということ自体を記述することが、今はできていないからだと思う。


人が2人以上集まるとそこにコミュニケーションが発生する。
だがこの「コミュニケーション」という人類の歴史と同じくらい歴史のある行為は、
これだけIT化が進んでいても根源的な変化はない。


このブレークスルーがない限りは、
頭脳労働の爆発的な生産性の向上というものはおきえないように思う。



本書の処方箋も、とてもプリミティブなやり方だ。(ただし、シンプルであるだけ強力だ。)

頭を使う仕事の重要性は、仕事のリスクが大きくなるほど増大する。
真にヘラクレス的な大変な努力が必要なのは、
仕事そのものをガリガリやる時間を減らして、
仕事についてじっくり考える時間を増やす場合である。
超人的な力が必要になる仕事ほど、チームのメンバーは、相互によく交流し合い、
交流を楽しむことが重要になる。
実行不可能な納期を押しつけられたプロジェクトこそ、
メンバーがチームと一体になるため、ブレーンストーミングを頻繁に行ったり、
プロジェクトチーム全員で夕食を共にすることが絶対に必要だ。


頭脳労働の産物は、
人と人とのコミュニケーションの中からうまれるということ。
なので、単純に「人の作業を機械(コンピュータ)に置き換える」という、
ここ100年くらい続いてきた工業的進歩のやり方ではうまくいかない。


そんなことに20年前から著者たちは気づき、警鐘を鳴らし続けていた。


そしてそれは経験的に、おそらく合っているように思える。


そういう「場」をつくることが大事なのだ。

シャロンは、優れた管理者の本質をよく知り抜いていた。
つまり、管理者の役割は、人を働かせることにあるのではなくて、
人を働く気にさせることである。


ただし、この「場」であったり、優れた管理者とのコミュニケーションは、
目に見えるものではない。
なので、この辺りのやり方に再現性がないのであろう。


コーチング、という分野が一番近いか。
チームをコーチングするということ、
それは以前、自分のブログでも書いたことがあるけれど、
やっぱりスポーツチームをつくりあげるということに非常に近いんじゃないかな。


プロスポーツのチームづくりであったり、
高校、大学のチームづくりであったり、
フェーズによってやり方はイロイロと変わるけれど、目的は一緒。


プロスポーツ界のマネジメント手法をシステム開発コンサルティングする、
みたいな切り口は、成功しそうな気がする。