実物に触れて考えられる力というのが競争力になるのかなという話

昨日はうちの会社の新人研修の一つの集大成である発表があり、聞きにいった。
いくつかのチームに分かれて一台の車を分解して、チームごとになんでもいいから自分たちなりにテーマを見つけて発表するという内容で、毎年恒例になっている。


昨年と一昨年は聞きにいかなかったので、3年ぶりに発表を聞かせてもらったのだけど、今時な感じだなぁ。。。という印象を受けた。車を分解して、そこで上がった疑問に対して数値で分析したり、仮説を立てて検証をしたりというあたりは非常にスマート。仮説思考とか、ロジックツリーとか、そういうのを駆使しているチームもあって、その辺はすごいなーと思って聞いていた。今時の新入社員は優秀だなー、と。


ただ、うちの社長を初め上の人達が言っていたのと同じようなことを僕も感じた。
それはせっかく自動車を分解したのに、モノについての観察や言及が少ないということ。
すごく優雅なロジックだったけど、油の匂いがしてこないというか。車のシートをばらしてみてその製法を推測している話はすごく面白かったけど、そこから今の自動車市場の売り上げ推移の話とかになっちゃうと、とたんに醒めてしまった。この感覚は何なのかなと思っていた。


それはウェブとかで「正解」を持ってきてしまうことと、自分の目と手で実際のモノから取り出してきた「事実の組合せ」との違いなのかなと。


ある一つのモノから意味を見出すことは、すごく大変だ。
僕も新人研修の時にその経験をさせてもらったので、体感として分かる。あの時は、ウェザーストリップという窓枠をシールしているゴム部品の断面形状が(おそらく)窓ガラスを閉めた時に押しつぶされることで密着性を高めるために望む方向につぶれるための形状になっている、という結論を出すのに、そのゴム部品と2日間くらいにらめっこした記憶がある。
これもあくまで僕の推論で、「正解」かどうかはわからない。


でも、ウェブとかで探せばは一瞬で「正解」は見つかるかもしれない。
そうやって一瞬で「正解」が大量に見つかると、それを組み立ててストーリーをつくるようになる。でもそのストーリーには、質感が薄くなる気がする。感覚的な話だけど。


要はウェブ時代、高速道路が縦横無尽に通りまくっている今の時代には、色々なところから効率よく情報を集めてそれを組み立てる、というパターンに皆がはまっているのかなと。自分含め。
得られた情報から、ストーリーを考える、背景を考える、批判的に思考する、色々やるけど、そうやって皆が同じようなパターンに陥っているんじゃないかなという危機感を持ったということです。自分含め。


で、その対策の1つが、自分の実体験から得られた生の情報を大事にすること。要は自分で実物を観察して、触って、体験して、五感を使ってそこから情報を抽出すること。これが「考える力」という意味で差別化要因になるんじゃないかなと。ただし、自分で体験して、考えて、っていうのはウェブと比較してすごく時間がかかることだから、何の情報はウェブ/文献から得て何を自分で考えるか、という戦略は大事だと思うけど。


よくある「現場志向」ということなのだけど、これも自分の実体験から得られた知恵として書いとこうかなと。


※ ちなみにここで書いた新人さんたちの傾向は、話をしやすくするためにデフォルメしてます。彼らの名誉のために言うと、自分のやった時よりはよっぽど優秀だったなと。。。。