自分の道へ歩き出そう
昨日に引き続いての感想。
- 作者: ポーブロンソン,Po Bronson,楡井浩一
- 出版社/メーカー: アスペクト
- 発売日: 2004/06
- メディア: 単行本
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とてもいい本だった。
「自分は人生で何をすべきか?」という疑問を少しでも持っている人にはお勧め。
この邦題が過激なのだけど原題は
「What Should I Do With My Life ?」
この題名が、しっくりくる一冊になっています。
ブロンソンと一緒に、たくさんの人生を追体験するという不思議な感覚を味わえる。
そして、彼と一緒に自分なりの答えを見いだしていけるような気がする。
決して押し付けがましい「答え」は書いていないところに、彼の真摯さを感じた。
僕なりに感じたことをいくつかの抜粋で表現すると、
多くの人が、次は何かと自問し、最も金が儲かる方法、最も出世や大きなチャンスに近い場所を探しながら、人生を駆け抜ける。型どおりの成功物語では、"次"が来るたびに、主人公がよりの多くの金と、多くの尊敬と、多くの領土を手にするのが常だ。わたしは、別の成功物語を提案したいと思う。"次"が来るたびに、主人公がおのれの心から解放され、才能を発揮し、人柄を花開かせ、世界に差し出すべき贈り物を明白にしていく、そんな場所へと近づいていく物語を。
ここだけ抜き出すと非常に青臭い理想論に聞こえるが、著者がこの物語を描こうと多くのインタビュイーと一緒になってあがく真摯な姿勢と、彼自身のドラマチックな歴史からは、この理想に共感が持てる。そして、レバレッジバブルが弾けて、皆が心の拠り所を見失っている今、この理想はとても輝いて見える。
では、その理想に向かってどう向かえばいいのだろう。
昨日、僕が読んでいる途中に抱いた疑問は、非常に端的に、耳に痛い形でその後記されていた。
別の人間になりたいというあこがれを封じ込めてしまう人が、これほど多いのはなぜか?それは学資ローンに追われているせいではない。不景気のせいでもない。夢が具体性に欠けるせいでもない。それは、旧友を見捨てて別の仲間と盛り上がるような人間になりたくないからだ。どれが"逃げ"で、どれが自分にとって最適の選択なのか?あなたが置き去りにした人々から見れば、すべて"逃げ"だろう。さらに、以前一度でも逃げたことがあるなら、その手の批判はまぬがれない。それでも・・・
昨日の僕の答えは、考えていても答えは出ないので、
自分のモノサシで動くしかないということだった。
著者も、だいたい似たようなことを言っているように感じた。
本書には、人生の選択に迷いに迷って自分なりの選択をして、
その結果に当惑し、さらに迷っている人たちの例が多く出てくる。
そういう人たちの人生を追体験していくことで、自分に対する「問いかけ」も
より切実に行えるわけなのだが、後半部には、なんらか迷いを抜け出た人たちの例がでてくる。
一番感銘を受けたのは、二十七年間、終身在職権を持つ科学の教授として大学に勤めた後、
大学を追われ、法曹界であたらしい職業人生に踏み出した七十歳のシドニーの話だった。
もちろんそれは大変なチャレンジだったが、彼はそれを乗り越えた。
「大切なのは、おのれの自由を失うような目標は設けないこと」だ。
シドニーのもとには、人生の秘訣を教えてほしいという依頼がしばしば舞い込む。秘訣はない。じっと踏ん張って、チャンスの到来を待つだけだ。
お気に入りの警察小説の中に、買収合併を手がける銀行マンが、人間味のない人生を送って来たと悟る場面があるという。
「まさにわたしが感じたのと同じ。ある地点まで生きてきたときに、はっと気づかされる。体がそこそこ動くうちに何かをしなくてはいけない。残りの人生をむだにしてはならない。」
焦らずに、自分の人生を見直すチャンスをまつ。
自分が人生に求めているものに気づくときまで、
それに手を伸ばそうと思い立つ時まで、
それに手が届く時まで。
そんな風に感じた。
とても強く勇気づけられたのだけど、
どこに書いてあったか思い出せない一文がある。
それは、著者が900人(!)にものぼる人々へのインタビューを通して見えてきたのは、
皆、それぞれの理想というものを最初からはっきりと描いてはいないということ。
後にうまく行ったほとんどの人が、
最初はその夢を単なる幻想であったり願望であったりと思い、
実際にそこにたどり着くことなどできないと思っていた。
そして実際に行動を起こすことには、とても大きな不安、恐怖がつきまとった。
しかし考えてみれば、本来的に大きな目標なのだから、
不安や恐怖はあって然るべきなのだ、ということ。
リスクをとる、
という言葉が昨今ブームな気がする。
リスクとは何か。
統計的な、その後発生しうる事象の確率分布ということ以外にも、
恐怖や不安から目をそらさずに、その先にあることを見つめて行動を移す、
という抽象的なリスクもあるだろう。
そうした恐怖や不安に打ちのめされないように、
現実社会で前に進むための力が、とても大事なんだと思う。
そうやってチャンスを待てば、きっと道は開けるのだろう。
要するに、向かい風の時代においては、つまらない人生に甘んじることこそ実用に沿わない。