Vision Matters - Jensen Huan(NVidia)

Stanford's Entrepreneurship Corner: Jensen Huang, NVIDIA - Vision Matters
Jen-Hsun Huang - Wikipedia, the free encyclopedia
nVIDIA創業者の方。
先日、東工大にきてスピーチしてましたね。
後輩が直接お話しできたらしく、感動してました。うらやましい。


この講座の18年前には Stanford の学生として、その座席に座っていたとのこと。
卒業後、2年でnVIDIAを創業。以来、CEOとして今に至る。
Stanford のなんかの建物に、$30 million寄付したとのこと。うーむ、アメリカンドリーム。


Perspective 展望、見通し、というか。
そういうものが大事だよと言うお話。全般に渡って、信念というか文字通り Perspective に正直にやってきたのだろうなと言う感じが伝わってきた。物腰も柔らかく、深みのある落ち着いた話し方で、「VCはビジネスモデルにではなく、人に投資する」という言葉を体現しているような感じを受けた。



以下、意訳

Perspective が大事

会社を作るということは、とんでもなく大変。
その過程について、自分の経験から話そう。


16年前、3人のエンジニアで会社を始めた。


ビジョンというのは、私にとっては大きな言葉だ。
なぜなら、私は Vision Matters と信じているから。


でも、私は Perspective という言葉の方が好きだ。
ビジョンは、誰か特殊なビジョナリーにしか持てないようなイメージがあるが、Perspective は誰でも持っているから。
あなたが世界をすこし違ってみることができれば、そしてそれに価値を見出すことができれば、あなたはその特殊なやり方で問題に取り組むことができる。


我々の Perspective について。当時は1993年。その頃といえば、PCもないしネットワークもない。ワイヤレステクノロジーもラジオしかなくて、世界最速のCPUが 66MHzといったところ。デスクトップPCはオフィス什器として使い始められたというところ。僕たちの Perspective は、このコンピューターという機械をつかってグラフィックスを扱えるようにすれば利益が出るのではないかということ。例えばゲームとか。


だから僕たちの初めのビジネスモデルは、そうしたグラフィックプログラムを、当時はハイエンドなワークステーションにしかなかったグラフィックシステムを再発明して、安価にするということだった。
当時はパソコンでゲームをする人はいないし、市場もなかった。母親に、コンピューターでグラフィックを映すチップをつくるビジネスを始めようとしているんだ、と話すと「あなたはなぜ働かないの」と言われる始末。


もちろん、僕たちはゲーム業界が大きくなると確信していた。
それは明確な Perspective だった。僕は最初のゲーム世代だし。


我々の考えた Perspective、ビデオゲーム業界が大きくなるということは、今では正しかったということが明確に分かる。でも、当時はそれがとてもユニークな考えだった。

Nobody could create the technology, nobody could build the company with the sole of building technology to make video game possible.

だれもそんな技術をつくっていなかったし、だれもビデオゲームのための技術だけを目的とした会社なんてつくろうとしていなかった。
それが我々の Perspective だった。


とはいえ、この技術は他のことに色々応用できる。
僕が好きなのは、5年前にシリコンバレーにあった Keyhole という会社だ。
バーチャルな地球を作って、検索すれば地球のどこにでも行けてしまう。でもこの会社は資金調達が全然できていなかった。私はとても興奮して、この会社に投資した。その後この会社は Google に買われ、Google Earth になった。今では、Google Earth は、地球上で一番ダウンロードされたアプリケーションになった(2億ダウンロード)。このように、グラフィック技術はビデオゲーム以外にも使われているものだ。


ともあれ、我々には Perspective はあった。
これを VC に説明するのに、VC が技術的に可能か、市場規模や成長がどのくらいになるかをイメージさせることが必要だった。Perspective はユニークだったが、それで利益を出すというのはむずかしかい。当時は市場もないし、そもそもそんなカテゴリすらない。当時の市場規模はゼロだった。アナリストも書いてないし。
そうすると、VCとお互いに感化される何かに気づくということになる。我々はセコイアのVCと出会って、2億円を調達してもらった。



Perspective について、他の事例をあげよう。
何年か後、セコイアの人がやってきて、Stanford の学生達が何人かで会社を始めようとしているという相談を受けた。インターネットのイエローページをつくるというのだ。それは有料なのかと聞くと無料だと言う。それに投資する価値があるかどうかが分からないということだ。今のヤフーだ。


あなたの Perspective は、あなたの人生、価値観にもとづいてできている。
あなたが Perspective を持っているということは、Vision をもっているということだ。


ヤフーの場合、他に似たようなウェブページはたくさんあった。アルタビスタ、エキサイト、ライコス、、
では彼らは何が違ったのだろう。彼らの Perspective はなんだったのか。
彼らはコンテンツへのチャンネルをもつということに特化していた。だから検索技術は外注していた。それが結果的に Google をうむことにつながっているのだけど。



もし、2つの会社でコア技術、お金、状況も一緒の会社があったとしても、その2つの会社は全然違うものを生み出すだろう。それは Perspective が違うから。彼らはそれぞれ世界を違って見ているのだ。
So perspective matters, vision matters.



1990年頃には3Dグラフィックの会社はほとんどなかった。
それが1995年頃には50−70のスタートアップがひしめき合う状態になった。今残っているのは nVIDIA だけだ。優秀な会社も大きな会社もいっぱいあった。
何があったのか。
なぜ1つだけが生き残ったのか。


それが Perspective によるものだということに関する例を挙げよう。

I believe that you need to understand the reason why your business work.

あなたの仕事の本質、何があなたの仕事を回しているのかということを理解しないといけない。


nVIDIA の場合、コアはセミコンダクタ技術だ。
セミコンダクタ技術には、ムーアの法則がある。
これは競争であり、エンジニアのチャレンジでもあり、ペースメーカーの法則でもある。


我々の Perspective, 3Dグラフィックスへの要求は際限がない(insatiable)ということに基づいて、我々は、毎年チップの性能を2倍に上げてきた。
たとえ顧客がそれを望まなくても、価格が高いという声が聞こえてきてもだ。こんなことは学校では習わないと思うが、顧客というものはあなたのビジネスに対して「〜〜をするな」とは言ってくるが、彼らはあなたの市場の本質を知らない。あなたにとって大事なのは「我々は何をするか」ということなのだ。だから、最初のうちは我々は顧客を無視して、毎年性能を2倍に上げてきた。こうやって我々は成長してきた。


Innovationについて

そうなってくると次はなんだろう。


君たちも、いずれイノベーションとは、結構危険なものだということを学ぶだろう。


誰かが素敵なアイディアをみつけると、それをみなが改善して改善して、ラップトップのようなすばらしいものをつくっていく。だが、その改善はいつか good enough になる。
我々の場合もそう、3Dグラフィックス市場は、昨日が固定され、ポリゴンとテクスチャだけのデバイスとしてはもう成長を続けられないと思った。
だから我々はチップを根本から変えて、よりアーティスティックな表現が可能なチップを、プログラマブルなチップをつくることにした。これはこれまでとは全く構造から違うものだ。現在のゲーム機、X-BOXPS3にはこの技術が搭載されている。


だが、技術の移行期というのは会社を殺すこともある。
それは会社を再発明していくことだからだ。これはとても面白い議題だが、今日は Perspective の話なので。


君たちはまず製品をどう作るかということを学ぶ必要がある。
だが、それからすぐに会社をどう作るかということを学ぶ必要が出てくるだろう。会社を作るというのは文化を創るということであり、ソフトな話であり、有機的であり、人々をどう扱うかであり、とてもむずかしい。


会社を作るのは、skill, intellect, trainging では足りない。
チャレンジングで、情熱があって、怖いこともあると思うが、やりがいのあることだ。


あなたがもし会社を作るのであれば、「会社をつくる目的はなぜか?」ということをよく自問することだ。
何かを売りたい?財産を作りたい?社会貢献?シリアルアントレプレナー
何でもいいのだけど、自分に正直になること。
私の場合は、なにかをつくること、なにかの一員であることが大好きだった。


質疑応答

大きなリスクをとる決断をしたときに、投資家はどんなことを言ってきたか?

大事なことを相談する場合、

  1. マネージメントチーム
  2. 社員
  3. ボードメンバー

の順がよい。


リスクに関しては、ハイテク分野では

If you don't reinvent yourself you're slowly dying.

リスクをとるのは怖いが、やるべきなんだ。


会社が現状うまくいっているときでも、マーケットリーダーはイニシアティブをとる必要がある。我々はG-Force effect(?)に莫大な投資をしたが、それは市場に受入れられなかった。プログラマブルなチップの開発はリスクが大きかったが、我々を新しい世界に連れて行ってくれた。

大企業とどうやって競ってきたか

製品の価格は、競合との関係で決めてはいけない。それは市場を見て決めるのだ。噂に惑わされずに、合理的な決断をしていくことが大事だ。あとは自分の企業のリソースがなにかということを知ること。我々はエンジニアが一番のリソースだ。

nVIDIAのカルチャーは?

Love Innovation, Risk Taking。 Risk Taking は、スキルなので、私はそのやり方を教え勇気づけている。誰だって失敗は嫌いだ。だが、成功をするには失敗の山を築かねばならない。no experience, no innovation。(もちろん、毎日昼すぎまで寝ろ、宿題はするな、という類いの失敗じゃないよ。)それが計算上不可能であっても挑戦することをすすめる。自分の直感に従うことだ。失敗ばかりしすぎて、それが当たり前になっても良くないのだけど。だから我々はチャレンジを評価して、正しい方向に導くようにしている。でも、これがolder company と newer company の違いの本質なんだ。インターネットの現代、いいアイディアを思いついたら、とにかくすぐ試してみること。いいアイディアなんて毎日世界中で20個くらいリリースされている。だめだったらすぐにやめて、また次を頑張ればいい。take it out, work more.

創業メンバーとの関係は

友人と始めたが、ビジネスをしていく上でお互いに真の理解ができていく。今でも彼らは最高の友達だよ。

大きな目標は?

General purpose として、nVIDIAの製品は医療にも使えたり、色々な分野に使えている。だけど、自分たちの目標を、スイスアーミーナイフのように何でも屋にしてはいけない。これは自分たちを強みから遠ざけてしまう、すごく危険なことだ。何かに特化することが大事だ。

創業時の利益配分と役割分担は

利益配分については、3人でやっている頃は完全に山分けだった。株に関しても同じ。
すると、この質問はガバナンスについてということになる。これは Building a great company という話になって、むずかしい話だ。
私の場合、急に要して私がCEOになった。それだけだ。ハイテク分野では結構多いと思う。
CEOになって色々学んだが、リーダーシップについていうと、leader need to be confortable with ambiguity(リーダーは曖昧を許容できるべき)。たとえば「未来はどうなるの?」と問われた場合、これは非常に曖昧な問題だ。リーダーシップもこれに似ている。曖昧が嫌いという人もいる。この問題を解決するのに、期限はいついつでリソースはだれだれで、やりかたはこうこうで、、ときっちりしていないとやな人だ。私が思うに、うまくいっている会社のCEOは総じて曖昧を許容している。私はこれを大事だと思うし、私も曖昧は得意だ。

会社のつくり方

私はビジネススクールの授業は出たことがないし、パワーポイントやパースエイドもつかったことがない。
30歳の誕生日が始めての仕事の日だったが、3人で集まって「何をしよう?」という話をしただけだった。それからしばらくも、話の主題は今日の昼飯などだった。あとは会社をつくるには、みたいな本を読んでいた。。VCが投資するとき、彼らはビジネスモデルには投資しない。簡単につくれるからね(私はかけないけど、そういうのが得意な人には簡単なことだ)。彼らは創業メンバーの人間に投資する。great people であるかどうか。それにはあなたの評判だったり歴史だったりが関係してくると思う。あとはビジョン。そのビジョンも、投資するだけの価値があるサイズであることが必要だ。10億円投資するときに、20億円の市場を狙っている人だったら回収できない。200億円の市場を狙っている人に投資することになる。それと1つ以上のクレバーなアイディア。reinvent yourself all time。これは great people に共通する特質だ。

メンターはいるか、過去に学んだよいアドバイスはあるか

こういう質問をするような習慣がある、きっと成功する。自分以外の誰かから学ぶという姿勢は、成功するためにとても大事だ。大小問わず、周りの人から学ぶことはとても多い。内の子供達はインターネット世代なので、彼らからFacebookを学んだ。それ以外にも、これまで私は素晴らしい人達と仕事をする機会がたくさんあったので、彼らからたくさん学んだ。役に立ったアドバイスを1つ挙げるとすると、"focus"ということ。人生の時間は限られている。色々なことをやりすぎるな。Focus managing。

これまでで最大のチャレンジは?

会社をreinventingしたこと。10年に1回は会社をつくり直す必要がある。だが、これは非常にむずかしい。上手くいかないこともとても多い。自分たちのうまくやってきた過去を壊すのだから。信念が試される。でもとてもチャレンジングで楽しいことでもある。nVIDIAを世界一重要なテクノロジーカンパニーにしたい。80歳になってもまたここでCEOとしてきたいね。

創業期の現金調達

サバイバルには現金が一番大事。cash is the king. making money, saving money, raising money.これがCEOの一番大事な仕事。startup 時期と今とそんなに変わっていない。

CEOのリーダーシップ育成

CEOの大事な仕事の1つは会社を育てること。そのためにリーダーを育てる必要がある。だから私は最近ほとんどの時間をマネージャー達と話し合って、彼らの様々な問題を解決するのを手伝うことにあてている。リーダー育成計画をつくって、早期に3人をピックアップして、、、というやり方は非常に良くないと思っている。選ばれなかった人達はやる気なくなってしまうしね。

スタートアップする時のモチベーション

money is the only singular reason that not start the company because starting company is very unlikely .会社を始める時必要なのは、本当に信じている、成し遂げたい何かがあること。それだけが、会社を始める理由になる。お金がついてくれば、すばらしい、くらいな。私はお金をたくさんもっているが、それは私のモチベーションにはならない。そもそも、お金は会社を始めたモチベーションではなかったから。会社を始める時の目的をもう一度良く考えてみて。アイディア?アイディアは世界にあふれているよ。この部屋の中にはたくさんあるように。アイディアは、本当は大事ではない。Perspective はユニークなんだ。そのパースペクティブを本当に信じられて、パースペクティブに従った何かをやりたいと思うのなら、それが会社を始める理由だよ。