見ることと共感力

 最近チャリ通なので、ポッドキャストを聞いてます。


 この先生の話は、いつ聞いても力強くてほんとに面白い。
ラジオ版 学問ノススメ Special Edition「ラジオ版学問ノススメ」山極寿一(京都大学大学院理学研究科人類進化論研究室教授)

今回のエキスパートは、京都大学大学院理学研究科教授でゴリラ研究の世界的第一人者、山極寿一先生。国際ゴリラ年に込められた思い、そして、ゴリラが今置かれている状況やゴリラ研究への思いについてお伺いします。

2009.06.17 配信 山極寿一

1952年、東京都生まれ。ルワンダのカリソケ研究センター客員研究員。
日本モンキーセンター研究員。日本霊長類学会会長。京都大学霊長類研究所助手を
経て、現在、京都大学大学院理学研究科人類進化論研究室教授。
専門は霊長類社会生態学。1978年からルワンダを中心にアフリカ各地で
ゴリラの野外研究を行っている。著書多数。近著に、裳華堂から出版の
「人類進化論 霊長類学からの展開」、文渓堂から出版の「ゴリラ図鑑」などがある。

ゴリラについての目から鱗の話が盛りだくさん。


その中で心に残ったのは、文明の発展に伴って人間が失ってしまったものについての話。


 人間が失ってしまったものというのは、「共感力」。
 携帯電話が発達して、いつでも好きなときに遠くに離れている人と話ができるようになった。コンビニが発達したことによって、いつでも好きな時間に、好きなものが食べられるようになった。こういう便利な生活によって失われてきているのは、人と直接顔を合わせてコミュニケーションをするということ。
 これはサルから引き継がれてきた人間の本能だが、人間が五感の中で一番重視しているのは「視覚」だとのこと。身の回りで些細な音がしたとき、何か慣れないにおいがしてきたとき、人はかならずその原因を「見よう」とする。


 これだけ大事な「視覚」が、現代の文明の利器の発達にともなって、コミュニケーションの中からどんどん失われている。一昔前には、家族が集まって食事をすることで、子供たちは人とコミュニケーションすることを学んできた。今は、経済的な理由が先立って、人と人とが時間をかけてコミュニケーションをとることが減らされている。そうやって人の心を感じ取る「共感力」が失われてきている、という話。


 ビジュアルコミュニケーションを標榜している会社に入ったものとして、この話はとても貴重な意見だなとおもった。ケータイ、メール、ブログ、ついったーにどっぷりな生活を送っている自分の身を振り返ってみても、確かにそうだなと頷ける。
 仕事でも大事な話をするときには、やっぱり直接会いに行くしね。でもコミュニケーションをとる相手として大事なのは仕事よりも家族や友人(仕事もとても大事ですが、相対的にそっちをもっと大事にすべきということ)。ITは人類に対してどんな貢献ができるか。とくにウェブ系技術が貢献すべきはコミュニケーション、人と人とをつなげるということ。
 この10年間のウェブ・ケータイの発達で失われた「ビジュアルコミュニケーション」が、盛り返してくるといいなと思えた。