日本の製造業はそっちにいくの?Canon imageFORMULA DR-150 レビュー

一言で感想を言うと「買ってよかった」です。

ソフトを含めて、ユーザーエクスペリエンスは非常に高いと思います。さくさくと紙を読み込むことができて、簡単な操作でOCRでテキスト起こしされたPDFがポンポンできていくのは本当に快感。省スペースなので、見た目もオシャレ。名刺を読み取るときに(紙質によって)キュルキュルいうのがちょっと気になるくらい。基本的にはすばらしいです。Evernoteとの連携や、Mac対応が待ち遠しい。


気になったのは、Canonは今後こういう製品をつくりつづけていく方向に舵をきったのだろうか?ということ。


「こういう」といったのは、DR-150 は良くも悪くもメリハリがよく効いた製品だなということ。
具体的にいうと、

  • 筐体の意匠面は鏡面仕上げだけど、作業中にだけ露出される内部面は(金型の)磨きがされていない
  • 紙送り精度はそんなによくない。紙も結構ななめに取り込まれるのだけど、ソフトが補正してくれる
  • ACアダプタは別売(なくても困らなかった)

という、日本の製造業っぽくない感想を得たから。
でも、トータルのユーザーエクスペリエンスとしては「買ってよかった」と思えるものになっていた。これはソフトがかなりイケていたことによる。それを踏まえたハードウェア設計なんだろうけど。


つまり、日本メーカーがこれまでやってきた「過剰品質」をやめて、必要なポイントはハードとソフトのあわせ技でキッチリ抑える、という理想の製造方式が採用されているように思えるのだ。実際の製造コストがいくらくらいなのか知らないけど、実は結構抑えられているのではないか。今は家庭用スキャナブームがきているのでこの値段だけど、実は1万円で売っても大丈夫、というくらいだとかなり力強いのだが。
これが日本の製造業が「海外でも勝つ」という意志の表れの戦略的製品だったりするといいなあ。


とはいえ、懸念点も。
それは要のソフトがCanon内製ではないこと。無論、製造業は数々の部品の組み立てからなっているという前提はあるので、ソフトはノウハウを持っているところに出すという理論はよい。だけどこういう最高品質ではないハードウェア(やるべきところはたぶん最高品質)とソフトウェアの組み合わせで、必要十分を抑えるという戦略をとるのであれば、ビジネス的に一番重要なのはソフトだと思う。このソフトメーカーが安い海外メーカーと組めば、同レベルの満足度の製品を作られかねない。
そこはぜひ頑張ってもらいたいと思います。このソフトメーカーを買い取っちゃうくらいしちゃっていいと思う。


「買ってよかった」という感想とともに、勝手に想像してみました。