有機的なネットワーク

アンバー・ケイス:誰もがすでにサイボーグ

テクノロジーをごく自然に使うようになった我々は、もはやサイボーグだ。
日頃(目に見えずに)身にまとっている大量の情報も、もはや我々とは不可分なものとなっている。
そしてインターネットの世界の中で、我々はもう一人の自分を確立し、もうひとつの青年時代・思春期を過ごさなくてはいけないようになっている。(現実社会とは違うルールの、もう一つの社会の中で大人になっていく必要がある。)

こんな状況がかつて想像できていただろうか。
これは違う時代の人間からみれば、人間は全く別の種族になってしまったといえるのではないか。


この新しい環境、時代の中で、人々はこれまでと全く違うルールで、繋がるようになっている。これはかつて、人間が経験したことのない状況に世界はもう既に成っているということだ。
アンバーは、それはテクノロジーが王である世界の到来ではなく、非常に人間らしい世界、有機的なつながりが生まれていると言っている。


これは僕個人の体験だが、以前に高いビルの上からぼんやり地上を走る車たちを眺めていたことがある。そこからは車の中に乗っている人は見えず、車はおもちゃのようにしか見えなかった。
そのおもちゃたちが、曲がりくねった道を走り、お互い道をゆずりあってスムーズに動き続けるさまを見ていると、自立したロボットたちが自分たちだけで動いているような、不思議な感覚におそわれたことを覚えている。
だが、あの時僕が見たものもテクノロジーの集大成である「車」という機械を、自分の手足の拡張として使っている人間たちがつくりだしていた有機的な相互作用、ネットワークだったのだ。
これがインターネットの世界では「コンピュータ」や「スマートフォン」といったデバイスや、「ウェブアプリ」といったツールを、人間たちが自分の脳の拡張として使って、有機的に相互作用しているにすぎないのだ。


この新しい繋がりが、どういう社会を生み出していくのか。
インターネット社会学は、これから本当に面白くなっていくのかもしれない。