組織と個人


複雑な世界、単純な法則  ネットワーク科学の最前線

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

この本を読んでて、ネットワーク科学以外に思ったこと。


協力や服従を促す社会的絆のネットワークの章で、
心に残ったこと。


映画にもなった話だが、
スタンレー・ミルグラムが「権威への服従」に関する実験をおこなった。
(被験者を一般から公募し、囚人と看守の役割を演じさせたところ
被験者がその役割に本当にはまり込んでしまったというような事件)。

社会的世界が有効に機能するのは、われわれが多くの場合、
命令に基づく関係を当然のものとして受け入れるからである。
いかなる軍隊であれ、隊員の一人一人がもっぱら自分のために行動したのでは、
有効に機能することはありえない。
(中略)
これらの集団の場合、ラインによる上意下達が効率性を高め、
個人間に生じる摩擦を最小限におさえていることは明らかである。

と、軍隊のようにトップダウン式で
最高のパフォーマンスを出す組織の形態もあるが、
それには弊害もある。

しかしながら、このようなネットワーク内での自分の位置を受けいれた個人には、
それなりの代償もある。
集団が機能できるようにするためには、
どうしても、自分を支配する権利をある程度譲り渡し、
自立性を抑制しなければならないからである。

そして、スタンレー・ミルグラムの言葉は重く響いた。

「階級性の組織に足を踏み入れると、
ひとはもはや自分が自らの意思で行動しているとは考えられなくなり、
自分のことを、他人の願望をその人に代わって達成する代行者だと見るようになる。
自分の行動をひとたびこの観点からみるようになると、
行動や精神面の働きに大きな変化が生じる。
その変化はきわめて大きく、個々の人はこの態度の変化によって、
階級性に統合される以前とは異なった状態におかれることになる
と言ってもいいかもしれない。」


大企業病といわれる状態を的確に表した言葉だと思う。


仕事をしている以上、
求められているパフォーマンスは下げてはいけないが、
自分自身に対しては埋没してはいけない。


最近、つとに思う。
組織に所属することの難しさもまた、感じる。