ミームの報酬


ミームのことを考えていて、ふと気づいたこと。


人には、他人に理解されたいという潜在的な欲求がある。
これは、ミームの報酬なのだということ。



どういうことかというと、
以前に、「コミュニケーションの本質とは体験の共有ではないか」
というようなことを書いた。


それが何故なんだろう、
なぜこうも「体験を共有する」ということが人を駆り立てるのか、
ということをずっと考えていた。


それで行き着いた結論が、
遺伝子(gene)が自分を伝播・増殖させる行為の媒介者に報酬を与えているのと同じように、
ミーム(meme)も自分を伝播・増殖させる行為の媒介者に報酬を与えているのだ

ということ。


生殖行為は、人間に限らず「快楽」という報酬が伴う。
それがあるから、動物は遺伝子を増殖するための生殖行為を、
もっとも適切な時期に行うのだ。例え命をかけて争うようなことになっても。
(近代の人間の場合は、色々なミームも入ってきているから複雑だが
本能的な性衝動という意味では一緒だ。)


花が受粉するために虫を媒介者とするには、
蜜という報酬を与えている。
動物に限らず、遺伝子が自分を増やすためには、
それを実行してくれる媒介者に対して何らかの報酬を支払っている。これは事実。
(正しい見方は、媒介者に対して報酬を与えられる遺伝子だから
自然淘汰をくぐりぬけて、現在に残っている。)



さて、ミーム(meme)が遺伝子(gene)と同じ性質を持ったものだと考えると、
現代まで残っているミームにも、
同様に、ミーム自身の伝播・増殖を実行してくれる媒介者に
なんらかの報酬を与えられるものが残っている(報酬を与えられるものしか残れない)
と考えられよう。


ミームは、コミュニケーションを通して伝播・増殖する。
自分の自己複製を他者の脳に刷り込む作業、に最も効率のいいやり方が
「体験を共有する」というふうにいえるのではないだろうか。



アダルトサイトがネットの世界で放っておいても爆発的に増殖したが(gene的な報酬)、
Web2.0的な「体験の共有」という行為もまた、
人間の潜在的(本能的)な欲求を満たす(meme的な報酬)駆動力が働いているということなのだろう。