ハイ・コンセプト(3)


間が空きましたが、つづき。。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代


コメントをもらったところだが、
物語には必ず感情的な効果が盛り込まれている、というのが特長らしい。

物語は、「ハイ・コンセプト」と「ハイ・タッチ」が交わるところにある。
物語は「ハイ・コンセプト」である。
なぜなら、ある物事を別の文脈の中で説明することで、
より明確にそのことを理解させてくれるからだ。
(中略)
また、必ず感情的な効果が盛り込まれているので、物語は「ハイ・タッチ」なのである。


この説明の後に書かれていた、非常にシンプルで、適切だと思った解説。

作家のE・M・フォースターの有名な言葉を借りれば、
事実は「女王が死に、国王が死んだ」であっても、
物語では、「女王が死に、その悲しみのあまり国王も亡くなった」となるのだ。

この違いは何なのだろうか。
これが「創造力(想像力)」とも言える。
「その悲しみのあまり」ということは、他人には決して分かるはずのないことであるし、
この文章を作成した人が、国王を間近に観察していたような感じではない。


あくまで想像なのだ。
この想像力が、読み手の想像力をかきたてる。


「国王はそれほど女王を愛していたのか」
「女王は若く美しかったのだろうか?国王は老いていたのだろうか」とか。
ただの事実の羅列からは、このような想像力はなかなかかきたてられない。


人の感情を動かす文章、人の想像力を引き出す文章、
「その悲しみのあまり」
この9文字に、それほど大きな差を生み出す何かがある。
それを知っている人が、これからの時代に必要であるというのだ。


これらの物語能力のビジネスへの適用事例がいくつか、挙げられていた。


個人的には、この辺が一番興奮しながら読んでいたところではある。


面白いなと思ったのは、「組織的ストーリーテリング」と呼ばれる運動。
組織の壁の中に存在する物語を認識し、
それらの物語を組織としての目標追求のために活かしていくこと。


実例としては、
世界銀行のナレッジマネジメント部門長だった
スティーブ・デニングの話が挙げられている。

世界銀行にある「情報」とは何なのか、
すなわち、どのような知識を管理しなければならないのかを理解しようと努めるうちに、
デニングは、銀行の公式書類や報告書を読むよりも、
カフェテリアで人々と話をした方が多くを知ることができることに気づいたのである。
組織の情報は、「組織内で語られる物語の中にある」ことがわかったのだ。
(中略)
そこで、彼は、知識情報を物語の中に込め、
物語の形で伝達することにした。
(中略)
「物語は新たな将来的展望や、新しい世界をイメージさせることで、分析的思考を保管するものである。
抽象的な分析は、厳選された物語を通して眺めることでわかりやすくなる。」


Excelシートをつかったり、WiKiをつかってナレッジマネジメントのようなことをしてきたが、
それでは伝えきれないものも、多くあることを実感しているので、このやり方はとても面白いと思う。
世界銀行の「物語」が実際にどのようなものなのかはわからないが、
ある状況における問題と、それに対する対処法を伝えるには、
やはり物語的な手法は有効であると思う。


微妙に身近な実例でいうと、畑村洋太郎先生の 失敗学のすすめ (講談社文庫) の中でも、
過去の危険な事例を伝えるのは物語的な書き方がされていたし、
それは、物語的に書いた方が読んだ人が同じ過ちを犯しにくくなるため、というようなことが書かれていた。たしか。


この「物語」は、アメリカではビジネス的に可能性を見出されており、
これは有名な話だが、ゼロックスが、コピー機修理部門の社員の「物語」がデータベースにされていることが挙げられている。


さらに一番「おーっ」と思ったのは、

さらには、企業が社内の物語を集め、活用する手助けをするベンチャー企業もいくつか登場してきた。

ということ。
これは面白いなぁ、、、と。

ストーリー・クエスト社では、顧客企業にインタビュアを派遣し、
従業員たちから物語を聞いて記録する。
そして、個人の物語をもとに、その会社の企業文化や氏名を広い観点から洞察できるCDを作成するのである。

おもしろいなぁ。
技術をナレッジ化するという点ではコンサルティング業務とも同じなのかもしれないが、
「物語」をつくる、という点が面白い。
とても、おもしろい。


この分野に求められるのは、将来的な夢、イメージを描けるような物語をつむぎだせる力だ。

「型どおりの役員会で上っ面を剥がしてごらん。
われわれは皆賢者がやってきて物語を話してくれるのを渇望している(ブリーフケースをかかえた)原始人に過ぎない」

これも実感できる。


意外と日本でも需要あるかもしれないな。。。