小説の意味

チッチと子

チッチと子

チッチと子は、小説家が主人公なだけに出版業界の今の苦しさがそこはかとなく伝わってくる。
確かに考えてみると、本、特に小説は一見なんの役にも立たない。インターネット時代の今、視聴すべき情報はあふれ、高コストな「読む」という行為を必要とする本は、どんどん遠ざけられていく可能性がある。


でも、文中にあった「小説は人の心を動かす力をもっている」という言葉にハッとさせられた。
それが虚構の世界であっても、人は小説を読んで心の何かを刺激され、何かを考える。それが小説の力だ。現実世界で心に大きな傷を負ったときに、それを癒し、歩き出す力を与えてくれるのもまた小説だったりするんだと。
そんなことに気付かされた。


モノがあふれ、情報は瞬時に手に入り、グローバルな労働力はどこまでも安価。これから本格的にそういう時代に突入していくが、そういう時代に求められるのは心を揺さぶられる体験なのではないだろうか。


希望的な観測ではあるけれど、物語を作るという能力が再発見され、再評価される時代がくると思った。