遺伝子 vs ミーム
ミーム研究の発展はこれからなのではないだろうか。
遺伝子vsミーム―教育・環境・民族対立 (広済堂ライブラリー)
- 作者: 佐倉統
- 出版社/メーカー: 廣済堂出版
- 発売日: 2001/08/01
- メディア: 単行本
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日本でミームを扱っている研究の第一人者であろう佐倉統先生の本。これまでなんで読んでいなかったのか、自分でも不思議なところ。
佐倉先生は博学だ。本当に豊富な引き出しから様々なエピソードを取り上げ、主題をおぼろげに浮かび上がらせるタイプ。剛直にエッセンスだけを書くのではなく、豊かにふくらませた知のプールの中で泳がされているような気分になる。文理融合の科学書という趣なのか。
で、主題のミームについてだが、本書にはミームとは何か、ということは非常にわかりやすく記されている。そして、僕がよく考えているようなテーマに付いても論考がされていて嬉しくなる。
僕が考えだすと興奮してしまう問いがこれです。
そして今、ミームはコンピュータとそのネットワークという、新たな外部処理装置ー電子媒体ーをつくりだした。
(中略)
では、ミームにおける電子媒体の出現は、生命進化では何に相当するのか?
佐倉先生の考えは、
ひとつの可能性は、新しいニッチの開発と獲得というものである。
(中略)
これは、それまでは海の中と陸上でしか生活できなかった生き物が、空中に飛び立つことができるようになった現象に相当する。
電子媒体の特徴は、
人の脳や紙媒体と比べた場合
- 物理的制約をほぼ受けない
- 複製コストがほぼない
- 正確にコピーされる
といったところか。
こういう新たな培地(メディア)にミームはロードされる可能性を得た。
その新たな世界で何が起こるのだろうか。
(ちょっと逸れますが)生命の起源にはいくつかの説がある。その中のひとつに、自己組織化というものがある。
- 作者: スチュアートカウフマン,Stuart Kauffman,米沢富美子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 1999/09
- メディア: 単行本
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これがミーム(もしくはその表現型)に適用されるような環境が整ったら、何かが起きてしまわないだろうか。
今度うまれた電子媒体というミームプールは、ミーム(というか情報それ自体)が相互作用しあえる環境にある。これまでの媒体と比較すると、この電子媒体は非常に活発な相互作用、自己複製が行われる環境だと思う。
・人の脳…相互作用性は高いけど、相互作用出来る数はすくない。自己複製は人のコミュニケーションを通してされるので、コピーミスが大きい。
・本…相互作用性は低い?(人の脳へと写るだけ?)自己複製は、印刷技術の発明とともに低くなった?
・電子媒体…最初の頃:相互作用は本と同程度。コピー精度は高い。
ウェブ世界:相互作用が超高い。コピーも適度にミスる(Twitterやブログがでてきてこのへん変わってきたと思う)
ウェブに生み出されている情報(ミーム)は日々増え続け、それらの情報同士の相互作用や自己複製が頻繁に起きている。適度にコピーミス(TwitterでのRTやブログのトラックバックはミスの多い自己複製だともいえる。)
いずれにせよ、文化進化はまだほんの<とばくち>のところだということになる。僕達が知っている生命の進化過程と言えば、たとえば生物の多様性が短期間で激増した先カンブリア紀の大爆発。あるいは、遺伝情報をダイナミックに撹拌する有性生殖。うんと身近なところで、脊椎動物の出現ーこういった現象に相当する文化情報の進化は、まだまだこれから登場してくるのだ、ということになる。そもそも、細胞ー代謝系の単位ーに相当する媒体すら、文化進化ではまだ出現していないのである。
もうこういう事を考え出すと、なんかワクワクしてきてどうしようも無くなってしまうのです。。ブログとTwitterが出てきて大きく変わってきたウェブ世界という培地(メディア)はもっともっと変わっていくことが期待できるし、その中で新しい文化進化を目のあたりにできるというのが現代に生まれた特権なのではないかと。
この系のランダム度とかって測れるのかな。
相互作用や自己複製の度合いってどうやって測定するのかな。
そもそも進化生物学ってちゃんと勉強したいな。
うわー、超知りたい。
と、書いていて勝手に興奮してきちゃったので、この辺でやめておきましょう。
この辺の話を最後までロジック押さえながらも書ききれるようになるのが文章を書くことに関する目標です。。。
※ ちなみに少し冷静になったので補足しておくと、ミームというのは実体がないために色々と議論のある概念です。こういう枠組みで物事を捉えると、上手く説明がつくことが多いよ、というのが一番穏当な解釈かと。なので、僕が上で書いているのは多分にSF的要素から抜けていません。とはいえ、「ミームとは何か?」というのは「意識とは何か?」という問いに通じる大きな問題でもあるようにも思います。