もうひとつの「マネー・ボール」

面白かった。書籍化を期待せざるをえない。

COURRiER Japon ( クーリエ ジャポン ) 2009年 06月号 [雑誌]

COURRiER Japon ( クーリエ ジャポン ) 2009年 06月号 [雑誌]

この中にある『もうひとつの「マネー・ボール」』という記事。
先輩が、この記事面白いよとPDF化してくれたのですが、本当に面白かった。
マネー・ボール」を書いた著者が、統計分析による効果的な人材発掘のトレンドがNBAにも及んできていることを書いている。
ここで「お買い得」として紹介されているが、Shane Battier。


最近NBAはほとんど見ていない僕も名前だけは知っていたくらいな選手。高校、大学と全米最優秀選手に選ばれており、デューク大からドラフトされた時にはかなり注目されていた。しかし、プロに入ってからはぱっとせず、トレードに出され、今はHouston Rocketsにいるらしい。
http://www.nba.com/playerfile/shane_battier/index.html
http://www.nba.com/media/act_shane_battier.jpg
数字だけ見ると、確かにいけてない。
一試合あたり平均得点: 7.3
      リバウンド: 4.8
      アシスト: 2.3
数字だけ見ると、ホントに中の下という成績だ。


一番派手なスターである Kobe Bryant と比べてみると、
NBA.com日本版 - アメリカプロバスケットボールリーグNBA日本公式サイト
一試合あたり平均得点: 26.8
      リバウンド: 4.9
      アシスト: 5.2
という感じ。Battierの地味さが目立つ。


しかし、ここに「小学校3年のときに、正確なデータ分析でスポーツのチームを強くすることこそ、自分が人生で本当にやりたいことだと悟」り、将来スポーツチームを買うための資金作り用に事業を興そうとMITスローンのMBAまで取った弱冠33歳のダリル・モーリーが、ロケッツのゼネラルマネージャーに就任したことで、Battier の輝きが、見初められることになる。

 バティエーの弱みは身体能力の壁に由来している。つまり、モーリーの言葉を借りれば、「ドリブルはできないし、動きは鈍いし、身体のコントロールができていない」点にある。
 バティエーが出場する試合には、誰の目にも明らかな弱みと、ほとんど目には見えない強みとが、妙な具合に混在している。彼がコートにいると、チーム名との調子がよくーそれもたいてはぐんとよくーなり、対戦相手の調子は悪くーそれもたいていはぐんと悪くーなる。
(中略)
 ディフェンスに回ったときは決まってNBAで最も得点を稼ぎだすようなプレーヤーに付き、付いた選手のシュートの確率を大幅に下げる。それと同時に、どういうわけか、チームメイトのディフェンスの効果を向上させる。モーリーの察するところ、これはバティエーが、ありとあらゆるささやかな行為によって仲間を助けているかららしい。
「あいつのことを私は"レゴ"と呼んでいるんだ」とモーリー。
「彼がコートに入ると、すべての小さなピースがぴたりと組み合わさりはじめるからだ。そして、勝利を導くあらゆる要素のうち、先天的な資質というより知性で到達できることにおいて、シェーンは他の者たちを上回っている」


バスケットボールは、野球に比べてまだ、成績を数値で正しく評価するのは難しい分野らしい。Houston RocketsにはスタンフォードMBAをとったサム・ヒンキー事業本部長がおり、彼が分析の統括をしているらしい。マネーボールの時のように、バスケットボールでも新しい評価軸ができることが楽しみだ。


目に見えない貢献。
これを目に見える形にして、評価の対象にするというのは難しい。
バスケの話ではなくて、会社組織やプロジェクトでも同じことだ。

静かなリーダーシップ (Harvard business school press)

静かなリーダーシップ (Harvard business school press)

この本をパラパラと眺めているのだけど、チームにはKobeのような明確なリーダーシップと、Battierのような静かなリーダーシップがある。これまで評価しづらかった静かなリーダーシップに光をあてる方法を知りたいなと思う。組織の継続的な活性化には大事なことだと思う。そういう研究とかしてみたいなぁ。。



ちなみに、Battierが NBA Fundamentals という YouTube に出てます。

これを見て納得&爆笑。
Taking a charge (オフェンスファウルの取り方)って、どんだけ地味なんだよ。。
バスケ部出身のあなたならこの地味さがわかるはず。
(Battier 一気にファンになりました。)



ちなみに、マネーボールはかなりオススメな一冊です。(ブラピで映画化!)

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男

マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男