スッラとカエサル
ちょっとずつ読み進めて、ここまできました。
ローマ人の物語〈12〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(中) (新潮文庫)
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/09/29
- メディア: 文庫
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ローマの偉人の中で、これまでのところ(僕の中で)際立っているのがスッラとカエサル。
スッラはこの本を読むまで知らなかったけど、
軍を率いてよし、外交をさせてもよし、政治をしてもよしと、抜群な人材。
曹操とイメージが重なる。
Wikipedia から引用すると、
ルキウス・コルネリウス・スッラ - Wikipedia
ルキウス・コルネリウス・スッラ・フェリクス(Lucius Cornelius Sulla Felix, 紀元前138年 - 紀元前78年)は、古代ローマの将軍であり政治家。単にスッラと呼ばれることが多いが、「ll」を無視してスラと表記されることも多い。
スッラは二度ローマへ自らの軍を率いて侵入し、最終的に独裁官(ディクタトル)に就任、領土を拡大したローマを治める寡頭政政府としての機能を失いかけていた元老院体制の改革を行った。しかしこの改革は強力な独裁官の権限をもって反対勢力を一網打尽に粛清するという方法も含んでいたために多くの血が流れる事となった。また彼の施した改革のほとんども彼の死後その効力を失うようになる。
やはりこの粛正がいけなかったのでしょうか。
粛正漏れがないように処罰者名簿を作成したり、密告を奨励したりするような綿密さ。
この辺りが不人気の原因なのでしょうか。
一方、この処罰者名簿に名が載っていて、スッラ存命中はローマにいられなかったのがカエサル。
こちらは言わずと知れた、ローマ史上最高の英雄。
カエサルとスッラは、その冷徹な行動力など共通点が多いのですが、周りの人間に対する扱いは正反対。
カエサルは、自分に対して何度も反乱を起こした人間に対しても、常に寛容の精神で臨みます。
まさに人格者。
人間の大きさを感じます。
が、結局スッラは自身の宿願であった制度改革を果たし、独裁官の座を自ら辞して引退。
(彼にとっては)平穏な最期を迎えます。
一方のカエサルは、彼が許した人間に暗殺されてしまいます。
冷酷さと温情がもたらした最期には、考えさせられるものがあります。
塩野さんのスッラとカエサルの比較を読んで納得。
スッラならば、キケロに、キケロでなくても自分の政治に反対する書を書こうと考えた者に、
書くか書くまいかと悩む暇さえも与えなかったであろう。
「処罰者名簿」に名を記入し、殺害実行部隊を送って殺させていただろう。
(中略)
だが、カエサルは、「処罰者名簿」をつくることさえ拒否した。
ポンペイウス派であった人々も元老院主導の共和制主義者もすべて許し、
帰国を認め、本国での生活ももとどおり、元老院の議席も以前と同じに与えたのだ。
(中略)
第三者から見れば、スッラ方式よりはカエサル方式のほうが良いに決まっている。
だが、それに直面した当の人びとにとってはどうであったろう。
言論弾圧によって書けないのならば、責任は言論を弾圧した側に帰すことができる。
だが、弾圧されたわけでもないのに自主的に筆をとらないとしたら、
その責任は誰にも転嫁しようがないではないか。
また、自分が一度は剣を向けた人に許され、命を助けられただけでなく
高官に任命されたとしたら、それによって感ずる後ろめたさは
誰に向けることができるのか。
スッラは、殺すことによって、この種の悩みや後ろめたさや憎悪を、
それらが生まれる前に消し去った。
カエサルは、殺さなかったことによって、生じさせることになってしまったのである。
生前のスッラは、恐怖に囲まれていた。恐怖に囲まれることを嫌ったカエサルは、
表にはあらわれない憎悪に囲まれることになったしまったのだ。
カエサルの周りの敗者たちが、カエサルと同程度の度量の大きさをもっていれば、
カエサルは殺されることもなく、ローマの改革もさらに進んだことだろう。
能力、人間力共に段違いだったカエサルには、
普通の人の心が理解できなかったということなのかもしれない。
恐怖に囲まれて生き、存命中には願いをすべて叶えたスッラも、
死後、彼の悲願であった元老院体制の復活は、あっというまに崩れさる。
憎悪に囲まれて生き、夢半ばで倒れたカエサルも、
死後、彼の描いた新国家体制はアウグストゥスという後継者に引き継がれ、
以後のローマの大発展へとつながる。
こうなると一番勉強になるのは、目立たず、密やかに国の改革を行った
初代皇帝アウグストゥスということになるかな。
次巻も楽しみ。
ローマ人の物語〈13〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(下) (新潮文庫)
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